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自動SEMイメージングと粒子サイズ・形状分析による電池正極材料の品質管理の迅速化
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自動SEMイメージングと粒子サイズ・形状分析 による

電池正極材料の品質管理の迅速化



はじめに

電気自動車のバッテリーパックは何千ものセルで構成されており、これらのセルの電極にはそれぞれ数百万もの粒子が含まれています。充放電の際は電極が正常に機能することが重要で、材料となる個々の粒子が想定通りに機能を果たし、電池容量を十分に活用するために、一貫した電気化学的特性を維持しなければなりません。

正極材料とその前駆体の粒度分布と微細構造は、電池のエネルギー密度と安全性に密接に関わる要素であるため、材料粒子の品質を製造工程で厳密にモニタリングする必要があります。走査型電子顕微鏡(SEM)は、原材料やその中間体の品質が保たれているかを確認するために、製造工程管理で使用されています。直感的で分かりやすい、統計的な粒子のサイズ・形状情報を得ることで、SEMは正極材料の品質管理プロセスにおいて重要な役割を果たします。

このアプリケーションノートでは、時間効率の良い自動イメージング可能な、Phenom XL卓上走査型電子顕微鏡を用いて、NCM(ニッケル・コバルト・マンガン酸化物)正極材とその前駆体を分析し、この手法が正極材料メーカーの品質管理(QC)手順の迅速化にどのように役立っているかを紹介します。この自動化により、工場の生産性を向上させ、製造と原材料の大幅なコスト削減をもたらすことが見込まれます。


正極材料の製造工程

図1は、NCM正極材料の製造工程を示しています。NCM正極材料は、通常、水熱処理に続いて共沈法で調製されるリチウム塩とNCM前駆体を混合した後に焼成されます。焼成後、凝集している粒子は粉砕工程を経て指定の粒度に粉砕されます。

図1. ニッケル含有正極材の製造工程の模式図


粒子サイズ・形状解析によるNCM正極材前駆体粒子の品質管理

最終的なNCM粒子の形態と粒度は、焼結プロセスだけでなく前駆体粒子の粒度にも依存します。そのため、前駆体の製造工程での品質管理も重要になります。前駆体の品質管理では、粒度分布と表面構造という主に2つの特性を調べます。一般的に、粒度分布の狭い前駆体は、より短時間でリチウム化されて、より良好な結晶性をもたらします。粒度分布が狭く、層構造が明確であることは、電気化学的性能の向上にもつながります。図2は、異なる合成プロセスで製造された前駆体粒子のSEM像です。図2aは、直径4.5〜13.6 μmの粒度分布範囲が広い前駆体サンプルのSEM像です。図2bは、多孔質表面構造を持つ粒度分布範囲が狭い前駆体のSEM像です。



図2. a) 広い粒度分布を持つ前駆体粒子、b) 狭い粒度分布と多孔質構造を持つ前駆体粒子


NCM正極材料の品質管理

一次粒子と二次粒子の特性評価はNCM正極材料の品質管理において必要不可欠です。図3に示すように、NCM正極材は多数の一次粒子からなる球状の多結晶粒子(二次粒子)として製造されます。



図3. 一次粒子サイズの異なるNCM粒子


二次粒子のクラックは、正極材料の充放電中に、個々の一次粒子がリチウムイオンのインターカレーションとデインターカレーションを起こす際に発生します。この過程における一次粒子の体積変化が、粒子クラックの主な原因となります。割れた粒子はセル内部の副反応を悪化させ、電池のライフサイクルを短くするため、一次粒子の特性評価はNCM正極材料全体の分析に不可欠です。

インターカレーション
インターカレーションとは、分子または分子集団が他の2つの分子または分子集団の間に入り込む可逆反応のこと。この場合、リチウムイオンが正極材の間に入り込んで行くこと。



図4. Phenom ParticleMetricソフトウェアにより解析された、
二次粒子径分布が広い多結晶NCM粒子(二次粒子)。


図4は、粒子径分布が広いNCM二次粒子を示しています。粒子径分布が広いとタップ密度とエネルギー密度が低い傾向にあります。前駆体の粒度分布が基準値内であることを確認することで、狙い通りに仕様に沿った正極材料を製造できる確率が向上します。同時に、QC基準を満たさない前駆体は回収して再処理することができ、製造コストを削減することができます。SEMは一次粒度と二次粒度の両方の情報を得ることができ、焼結中の主要パラメータを最適化するのに役立ちます。

焼結後、凝集した粒子は粉砕され、個々の粒子に分離されます。

図5aは粒子の分散が不十分な例を示し、図5bは過度の破砕により粒子が断片化した例を示しています。また、図5cは、一次粒子製造時の焼結温度が上昇してしまった結果、粒子が凝集した例を示しています。この凝集により、粒子は多結晶材料よりも分散しにくくなります。分散が不十分であったり、過度に断片化したりすると、均質性が欠けるため、粒子の電気化学的特性に悪影響を及ぼす可能性があります。SEMは粉砕後の粒子を鮮明に可視化できるため、このプロセスを最適化し、均一なサイズの粒子を製造するのに役立ちます。



図5. a)凝集した二次粒子、b)破砕過程で断片化した粒子、c)焼結中に温度上昇により凝集した一次粒子


SEMによる品質管理

一般的なSEMによる品質管理では、結果が全体を代表するものであることを示すために、1つのサンプルについて複数の場所をチェックします。通常、複数の倍率のSEM画像が必要であり、高倍率のSEM画像は詳細な微細構造(例えば、前駆体中の層状構造、一次粒子)を示し、低倍率のSEM画像は全体的な粒子特性(例えば、サイズ、分布、円径度など)を示します。これらの複数の画像を取得するには、以下の手順が必要です:

1. サンプルの装填
2. 目的の位置に移動
3. フォーカス、明るさ、コントラストなどの調整
4. 異なる倍率での画像取得
5. 必要に応じてステップ2〜4を繰り返す

毎日数トンの材料を生産する製造施設では、毎日何百ものサンプルを検査する必要があります。これは単調な手作業に何時間も費やすことになり、ヒューマンエラーが発生しやすくなります。


自動イメージングのワークフロー

Phenom XLは、AutoScanスクリプトを使用して、サンプルをセットした後に自動的にデータを取得する自動イメージングワークフローを行うことができます。一度に最大36個の試料をセットでき、それぞれの試料を複数の異なる場所、異なる倍率でSEM像取得ができます。この手順は簡単にカスタマイズすることができます。

例えば、正極原料の標準的な品質管理において、各サンプルの5カ所を1000、5000、10000の倍率で分析することで、一次粒子と二次粒子の両方を明確に観察することができます。36サンプルを手作業で行う場合、オペレーターは図6に示すステップを数百回繰り返す必要があり、完了までに3〜4時間を要する可能性がありますが、このプロセスを自動化すれば、ユーザー入力はわずか10分程度で済み、貴重な時間を他の作業に割くことができます。SEMは無人で、より安定して稼動するため効率が向上し、エラーが少なく生産性が向上します。


図6. 典型的なSEMイメージングのワークフローとPhenom XLの自動イメージングのワークフローの比較


AutoScanスクリプトによる自動SEM像取得のワークフロー

AutoScanスクリプトは、Phenom Programing Interface (PPI)で作成されています。AutoScanスクリプトを使用すると、Phenom Desktop SEMは、ユーザーが指定した複数の倍率で、サンプルごとに複数の位置の画像を自動で取得することができます。

自動化されたプロセスは、1日24時間、週7日間実行することができます。また、自動化により、どなたでも利用しやすくなり、人為的誤差もなくなり、データの信頼性が高まります。手作業ではわずか数枚の画像しか得られませんが、同じ作業時間でもAutoScanスクリプトを用いることで大量のデータを収集することができ、統計的根拠のある分析結果を提供します。


図7. AutoScanスクリプトのユーザーインターフェース


SEM像取得だけにとどまらない Phenom ParticleMetricソフトウェア

粒度分布の分析をさらに自動化するため、画像をPhenom ParticleMetricソフトウェアに直接インポートすることができます。解析が完了すると直ちにレポートが作成され、様々な粒子のサイズ・形状情報とその統計が出力されます。図8は、Phenom ParticleMetricソフトウェアのインターフェースを使用してNCM正極材の一次粒子を解析したものです。自動粒度分布は平均粒径2 μmを示しています。

図8. Phenom ParticleMetricソフトウェアのNCM正極材料の一次粒子の解析結果。画面A)このプロジェクトで使用した全画像のリスト、B)着色された検出粒子、C)検出された全粒子のリスト、D)すべての粒子データを計算した統計値、E)ユーザー定義のカスタムグラフを使用してデータを可視化


結論

このアプリケーションノートでは、正極材料の品質管理におけるPhenom XLの活用方法を紹介いたしました。自動イメージングワークフローは、画像取得と解析の自動化によって 品質管理プロセスを大幅にスピードアップし、製造コストの削減と生産性の向上を実現します。

- Phenom XLとAutoScanスクリプトを組み合わせると、多数のSEM画像を自動で取得できます。

- 取得したSEM画像はPhenom ParticleMetricソフトウェアで解析可能で、品質管理に重要な粒子のサイズ・形状情報が可視化されます。

- 自動イメージングワークフローは、バッテリー製造に使用される他の原材料の品質管理にも適用できます。



References
1. Xu, Zhongling et al. “Effects of precursor, synthesis time and synthesis temperature on the physical and electrochemical properties of Li(Ni1-x-yCoxMny)O2 cathode materials.” Journal of Power Sources 248, 180-189 (2014)
2. Hietaniemi, Marianna et al. “Effect of precursor particle size and morphology on lithiation of Ni0.6Mn0.2Co0.2(OH)2.” Journal of Applied Electrochemistry 51:11,1545-1557 (2021)
3. Langdon, Jayse, and Arumugam Manthiram. “A perspective on single-crystal layered oxide cathodes for lithium-ion batteries.” Energy Storage Materials 37,143-160 (2021)








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